「備蓄食料と食料品管理」-買い溜め、買い急ぎを防ぐために-


特定非営利活動法人日本ふるさと源基計画

理事長 青山貴洋


新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威によって世界中が日常を脅かされている。 この目に見えない未知の敵は、2019 11 月に中国湖北省で確認されてからわずか 3 ヶ月程で世界を駆け巡り、急激に感染者数を拡大させた。この状況を受け、2020 3 11日に WHO(世界保健機関)はパンデミックを表明した。

日本でも爆発的感染拡大を防ぐため、政府の専門家会議を経て、2020 2 25 日に不要不急の外出を控えるとともに、大型イベントの自粛、時差出勤やテレワーク導入の要請等によって人が密集する機会を避けることを求め、さらに 2 27 日には、公立学校の休校を呼びかけた。

市場では、マスクの品切れに続き、ティッシュペーパー・トイレットペーパーの紙製品をはじめとする日用品とともに、食料品が品薄になるなどの影響もでた。いわゆる「買い溜め」「買い急ぎ」が発生したということである。

昨年は、10 月の台風 19 号接近に伴い、都心部においてスーパーやコンビニなどの棚から食料品が姿を消すといった事態が起こった。普段から災害に備え、多くの人がある程度の食料品等の備蓄をしていたとすれば、このような事態になることはなかったのではなかろうか。

災害時のみならず、ウイルス等の流行感染に備える必要性も啓発されており、厚生労働省では、新型インフルエンザをはじめとする感染症予防対策として、外出を控えるよう要請されたときのために、「1 週間分。できれば 2 週間分を備えておきたい」と食料等の家庭内備蓄の必要性を広報している。

しかし、「2 週間分の食料品備蓄」と聞くと、多くの一般家庭では想定を超えるのではないだろうか。2 週間=14 日分×3 食=42 食の献立を考え買い物をするのは容易ではない。さらに家族の人数を計算しなければならない。だが、主食をどの程度備えてあるかを把握していれば、その主食を食べるための副食(おかず)を用意することで、緊急時の食料とすることができる。

米の場合、1 ㎏が約 6.7 合となる11 合は 1 食分の目安となるため、約 6.7 食分ご飯が炊けるという計算になる。家族構成が若い層の多い家庭では約 56 食分であり、比較的年齢層の高い家庭では 710 食分ということになる。家族がどの程度食事するかは、その家族が把握しているはずである。

仮にここで、ある家庭では 1 ㎏で 7 食分程食べるとして、家族構成が 5 人の家庭に 5 ㎏の米があるとする。そうすると、この家庭では、7 (1 )×5 ㎏=35 食分あるので、これを 5 人で割るため 35 食÷5 人=7 食分が備蓄されているという計算になる。これは 1 日に朝昼夕の 3 食を必要とするならば、2 日分の朝・昼・夕と、3 日目の朝が食べられるということだ。

では、2 週間の場合にどの程度米が必要になるのかといえば、1 人当たり 2 週間で 42 食であるため、5 人家族の場合、42 食×5 人÷米 1 ㎏あたり 7 食分=30 ㎏が必要ということになる。

副食はといえば、「緊急時のために必要な食料」として考えると、この「主食」を食べるものと割り切り、例えば、レトルトカレーや缶詰、また漬物や比較的保存性のある佃煮、さらには(あまりお勧めではないが)ふりかけをそれぞれ一食とすれば、42 食分を考えることもできよう。もちろん、生鮮品があれば、それらから先に調理することが必須となる。冷凍保存されているものもいま一度確認することでメニューにとり入れることもできる。さらに、主食の種類を増やすことで献立(メニュー)づくりは簡単になり、量も増やすことができる。単純に、朝はパン、昼は麺、夜はご飯(米)とすれば、14 食分のパン食メニュー、14 食分の麺メニュー、14 食分のご飯ものメニューといったように、献立づくりをある程度程容易とすることに貢献しよう。

このとき、朝食用のパンをシリアルやカロリーメイト、クッキーなどといった、あるものを代用することもできる。昼食となる麺類は、生麺を購入しているのであれば、それらから先に食べるよう努め、乾麺に多いパスタやそば、うどんといったもののメニューを取り入れればよい。このとき、即席麺やカップ麺があれば、1 食とすることもできよう。

つまり、緊急事態下では、主食がどの程度備えられているかによって、買い出しの仕方が変わるのである。さらにいえば、この家庭内の食料品が、「どこに、どの程度、どのように」保管されているかといった、「管理」されているかによって、急な「買い溜め」や「買い出し」を防ぐことができるのである。

不要不急な外出を控えることが求められている。しかし、生きるために、活動するために、食事をしなければならない。一部の買い溜めや買い急ぎによって、いま必要な人のところに、必要なものが行き届かないことだけは避けなければならない。

いま一度、家庭内にある食料品を見直してみてはどうか。そして、主食を基本とした家族の必要な食料を考慮したうえで買いものに出てはどうか。いま、改めて、「食料品管理」が必要とされる。

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1 1 合は約 150g であり、カロリー換算すると約 500 ㎉となる。

≪参考文献≫

青山貴洋 (2016). 「「地域の食料安全保障」緊急時の地域食料対策によるミクロ的食料安全保障政策 の 探 求 と 定 量 的 分 析 へ の 挑 戦 」 . http://furusato- genki.jp/local_food_security_aoyama_20160212.pdf . 2020.3.28 確認.

青山貴洋 (2019). 「「自助・共助・公助」と「市民」による地域防災力:食料危機管理政策からみた災害時空白期間における相互補完的防災体制の可能性」. 法政大学. 博士論文. https://hosei.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main

_item_detail&item_id=22433&item_no=1&page_id=13&block_id=83 . 2020.3.28 確認.